腰痛予防にコルセットは有効か?
■コルセットの腰痛予防効果はよくわかっていない
雑誌やテレビで、軟性コルセット(以下、コルセット)はよく紹介されますし、肉体労働をされる方の中には、腰痛を予防する目的で習慣的にコルセットを使用される方も少なくありません。
しかし、実は、コルセットの腰痛予防効果については、よく分かっていません。
2012年に発行された「腰痛診療ガイドライン」1)によると、コルセットの腰痛予防効果は「Grade I」、すなわち「複数のエビデンスがあるが結論が一様ではない」という、最も推奨度が低い位置づけとなっています。
Van氏ら2)は1998年、重労働者を対象にコルセットの腰痛予防効果を確かめるべく、次の実験を行いました。
まず、次の4つのグループを設けました。
①コルセットを装着したグループ
②腰痛予防教室に通ったグループ
③コルセットを装着し、腰痛予防教室に通ったグループ
④いずれも行わなかったグループの4つです。
6ヶ月間の調査の結果、6ヶ月以内に腰痛が発生した確率は、コルセットを装着したグループで36%、装着しなかったグループでは34%と、差がない結果となりました。
一方、介護職員360名を対象としたランダム化比較試験による調査結果によると、腰痛予防教室のみのグループに比べ、腰痛予防教室とコルセットを装着したグループの方が、腰痛を有した期間が短く、腰痛の再発予防に有効であったとする報告2)もあります。
このように、コルセットの腰痛予防効果については一様ではなく、結論づけられておりません。
■コルセットを装着する意義
コルセットを装着すると、回旋運動を除き、腰椎全体の動きが制限されるといわれています。もし、腰痛の原因が腰部の軟部組織(筋や関節、靭帯など)の損傷であるならば、損傷が回復するまでの一定期間は、できる限り損傷した組織にストレスを加えるのは避けなければなりません。
その為、急性炎症期とよばれる腰痛発症より約1週間は、できる限り損傷部位へのストレスを避ける目的でコルセットを使用することが望ましいと考えられます。
また、腰部の病気が重度であり、治療上の理由(例.椎体の厚潰進行の予防、骨癒合の促進等)により、コルセット着用が医師より求められる場合もあります。この場合は着用の仕方や着用期間について専門的な見方が必要となる為、医師や理学療法士とよく相談する必要があります。
腰痛があり、コルセットを着用するべきか悩んだ際には、悩まず専門家に相談しましょう。
<文献>
1)腰痛診療ガイドライン2012(日本整形外科学会、日本腰痛学会監修,南江堂)
1)Van Poppel MNM,koes BW,Van der PloegT,Smid T,Bouter LM.Lumber supports and education for the prevention of back pain in industry.JAMA.1998;279:1789-94
2)Roelofs PD,Bierma-Zeinstra SM,Van Poppel MN,wt al:Lumbar suppoets to prevent recurrent low back pain among home care wolkers: a randmaized traial.Ann Intern Med 147(10):685-692,2007