足組み姿勢は、からだに悪い姿勢とはいえない

■足を組むのは、からだに悪いことなのか?

「からだにゆがみを作るから、できる限り足は組まない方が良い」

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足を組んだ姿勢も、猫背姿勢と同様に、健康に悪いというのが常識です。

結論から言うと、足組み姿勢は一概にからだに悪いとは言えません。

むしろ、からだが疲れた時には積極的に足を組んだ方が良いともいえます。

 

Snijders氏ら1)2)は、足を組んだ姿勢と、通常の座位姿勢との違いについて様々な研究を行い、興味深い結果を報告しています。

 

研究の結果、足を組んだ際に下になる側の体幹(左足が下になる組み方をした場合、左側の体幹)の筋活動は、通常の座位姿勢よりも有意に減少することが判明しました。

 

これは、足を組んだ姿勢は、からだの消費エネルギーが少なくて済む、非常にエコな姿勢である事を意味します。

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更に、足を組んだ際、下になる側の股関節(左足が下になる組み方をした場合、左側の股関節)の梨状筋が伸長されることが判明しました。

 

梨状筋は、仙腸関節をまたいで付着していることから、骨盤を安定させる作用があると考えられています。上記の結果と合わせると、梨状筋が適度に伸張され、骨盤が安定した結果、骨盤を安定させる役割を担う筋(内腹斜筋や腹横筋)は活動を低下させたと考えられます。

 

股関節にある梨状筋を骨盤の安定に利用できる点において、猫背姿勢よりも更に進んだ省エネ姿勢といえ、からだが疲れ、エネルギー消費量を節約する時に最適の姿勢といえます。疲れた時に足を無意識に組むのは、この為です。

 

■足組み姿勢で注意するべき点と指導のポイント

とはいえ、猫背姿勢同様、長時間足を組んだ姿勢を続けることは望ましくありません。

背中の筋膜や背骨を支える靭帯、関節包などの組織に微細なストレスを加え続けることになり、微細な組織損傷が生じ、痛みを感知するセンサー(受容器)が反応する、つまり腰痛の原因になるためです。

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加えて、足を組んだ側の梨状筋が伸ばされると、人体最長の神経と呼ばれる坐骨神経にストレスが生じます。(坐骨神経は梨状筋の下や筋の間を貫通するという解剖学的な特徴があります。)

 

さらに、足を組んだ下側の股関節には、足を組まない状態に比べ、より多くの荷重を受けることになります。結果、坐骨神経に更に強いストレスが加わり、足先がしびれる原因になると考えられます。このような状態を梨状筋症候群といいます。

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姿勢指導を行う場合には、足を組んだ姿勢は短時間であれば問題ありませんが、長時間、足を組んだ姿勢が続かないよう、時々足を組み替える、椅子から立って歩く、など短時間に姿勢を変化させることを意識するように指導しましょう。

 

 

<文献>

1)SnijdersCJ et al:Why leg crossing? The infruenceof common postures on abdominal muscle activity.Spine 20:1989-1993,1995

2)SnijdersCJ et al:Functional aspects of cross-legged sitting with special attention to piriformis muscles and sacroiliac joints.Clin Biomech 21:116-121,2006