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骨盤のゆがみの正しい解釈

■骨盤は、はたしてゆがむのか?

「骨盤のゆがみ」

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雑誌やテレビでよく見る言葉です。

 

骨盤がゆがむとからだには、肩こり腰痛のみならず冷え性やむくみ、食欲不振やうつなど様々な症状が現れる、なんて紹介しているものもあります。

 

しかしながら、この言葉にはいくつかの注意が必要です。

そもそも、「骨盤のゆがみ」という言葉は医学用語にはありません。

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医学用語にないという事は、病気との関係性は医学で説明できないという事です。

 

次に、「骨盤のゆがみ」の状態の定義が曖昧です。

 

①正面から見て、骨盤が左右どちらかに傾斜している状態

②骨盤にある関節(仙腸関節)が、正常な位置よりもずれている状態

 

どちらの状態も骨盤がゆがんだ状態として説明されます。

 

前者の状態は、股関節の周りの筋肉の作用により十分起こり得えます。その為、この状態を「骨盤のゆがみ」と言い表すのであれば、医学的に正しいといえます。

 

後者の状態は、医学的には特別な場合を除き、通常は起こりえません。

仙腸関節の可動性の真実

Kissling氏ら1)は、1996年、骨盤にある関節、仙腸関節に骨ピンを埋め込み、レントゲンを撮影し、からだを動かした際にどの程度の可動性が仙腸関節に存在するかを研究、論文にまとめました。

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すると、前屈動作時に仙腸関節で生じる運動は、

回転運動の場合

男性2.1°、女性1.7°

並進運動の場合

男性0.9mm、女性0.7mm

 

であり、仙腸関節は非常に可動性が少ない関節である事が判明しました。

当時、仙腸関節は全く動かない関節と考えられていた為、僅かにでも可動性が存在することが判明したことは画期的な発見でした。

 

その他の研究者の報告2)~4)においても、同様に

回転運動は0.3~3.1°

並進運動は0.7~1.2mm

と可動性に乏しいことが確認されました。ただし、病的な場合において

後屈運動で6.0°

並進運動で2.5mm

可動したとも報告されており、病的な場合や出産時など特別な場合に限り、多少可動性が高まる関節であることも判明しました。

 

■骨盤のゆがみの医学的に正しい解釈

このように、仙腸関節は大きな動きが生じる関節ではない関節と考えられる為、骨盤がゆがんだ状態を、関節がズレ、骨盤が大きく弯曲するようなイメージするのは、医学的には正しくありません。

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骨盤のゆがみとは、骨盤にある仙腸関節がずれていると解釈するのではなく、骨盤の形態は変わらず、前後左右に傾斜、あるいは水平面上で回旋している状態であると解釈するのが、医学的に正しい解釈であると考えられます。

 

 

 

<文献>

1)Kissling RO,Jacob HA.The mobility of the sacroiliac joint in healthy subjects.bull Hosp jt Dis.1996;54:158-164

2)Egund N,Olsson Th,Schmid H,Selvik G.Movements in the sacroiliac joints demonstrated with roentgen sterophotogrammetry.Acta Radiol Diagn(Stockh).1978;19:833-46

3)Brunner C,Kissling R,Jacob HA.The effects of morphology and histopathologic findings on the mobility of the sacroiliac joint.spine.1991;16:1111-7

4)Jacob HA,kissling RO.The mobility of the sacroiliac joints in healty volunteers between 20 and 50 years of age.Clin Biomechech(Bristol,Avon).1995;10:352-61